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江戸―東京の左官組合の歴史
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東左連前史2
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江戸-東京 左官組合の歴史
鈴木 光  ものづくり大学特別客員教授 東左連理事 東左職連副会長

東左連のルーツをご存じでしょうか。平成22年に当会が発行した「五十年の歩み」より
鈴木光氏が著した「江戸―東京の左官組合の歴史(東左連前史)」を以下に転載致します。
なお掲載にあたり新たに写真資料を加えました。
東左連50年誌より「東左連前史2」

表題にある『左官職工事業格等級』は、東京都左官工業協同組合発行の『左官業組合七十年史』に記述されていた、左官業およびそこの携わる左官職人の格式を等級別に表記したものである。

左官職工事業格等級
明治十九年四月左官職工事業格等級其他附属職工等の業格を制定して一般組合員に配布し励行せしめた。
■美 術 一等工事 肖像並に動物形体
二等工事 立方幾何学 遠近学 解剖学 画学 植物模形
三等工事 平面幾何学 理学初歩 化学初歩 美術初歩 画学大意 
普通左官職一等工事を為し頭領代理 たるを得へきもの
四等工事 普通絵模様塗 普通形模様塗
■普 通 一等工事 上等見世蔵 上等倉庫 上等磨き 上等海鼠塗  口廻り上等仕上げ 
西洋風蛇腹正直線塗 家根 漆喰肉揃灰頭絞リ 上等海鼠塗 上等数寄屋壁
二等工事 中等見世蔵 普通上等倉庫 普通上等倉庫口廻り  中等磨き 普通数寄屋壁 
西洋風蛇腹直線塗  屋根漆喰肉揃 鬼板箱盛上げ塗 上等殿中壁  下等海鼠塗
三等工事 上下等見世蔵 中等倉庫 中等塗口廻り  下等磨き 普通上等家根漆喰 
中等殿中壁 下等西洋風蛇腹塗 形ち敲き
四等工事 上等住居壁 普通上等上塗 下等倉庫 下等口廻り  中等家根漆喰
上等竈(上塗磨は除く)下等殿中壁
五等工事 中等住居壁 中等上塗 下等家根漆喰 中等竈  納屋倉庫
六等工事 中等住居壁 下等家根一遍漆喰 下等上塗  平面敲き 下等竈 上等貸長屋中塗限り
七等工事 漆喰普通調合練方其他土調合共 下等貸長屋中塗限り


上の提灯雛形は明治16年に警視総監より
認可された 東京左官職組合申合せ規則に
よる出火場出入りの目印

この表から読み取れることは、業務分野を「美術」と「普通」に分けて等級が制定されている。「美術」は一等工事から四等工事に、「普通」は一等工事から七等工事に分類され、「業」およびそこに携わる「職工」をも格付けしている。美術一等〜四等、普通一等〜七等には、それぞれ付随する工事内容が記述されている。

 表の「美術」とされるものは、石膏の「肖像並に動物形体」と漆喰の「普通絵模様塗」や「普通形模様塗」とされる。さらに、東京で左官の職工学校が設置されるのが大正9年であり、その教育方法は、実務を中心とする技能教育であった。左官職人が、職工学校等で「左官職工事業格等級」制定時に美術の学問を系統だって学ぶことは不可能であった。当時の西洋的左官彫刻に携わることが左官職の憧れで あったと推測される。また当時左官職人が目指すものとして技術・技能に長けた伊豆長八のような存在であった。
しかし、長八は「左官職工事業格等級」制定時73歳であり、2年後に深川の八名川町で没している。
 
 表の「普通」という区分に設けられている用語は、建築工事の左官一般職種、職能であることが工事内容で判断できる。三等、四等工事には、表中の左官工事で類似が多く見られ、平均的左官職人の等級として位置付けできる。また、組合の結成目的である火災時に火事場を通行できるは、四等以上で、『出火通行鑑札』を携帯したものとされている。
 記述された「左官職工事業格等級」は、主に野丁場左官工事を領域とする東京都左官業協同組合の前身によって、セメントが左官工事に普及されていない時期に制定されたものである。その為、この『左官職工事業格等級』の職域では、江戸期から受け継がれた集団で作業する土蔵工事を中心に格付けされている。仕上げ工事は、関西の土もの仕上げより、漆喰の比率が高く、『関西の土物、関東の漆喰』の言い伝えを表している。制定された「左官職工事業格等級」は、どのように活用・運用されか不明であるが、当時の仕様を施主、元請けに示す規準として評価できる。

(東左連前史3に続く)




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